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神戸地方裁判所 平成3年(行ウ)31号 判決

原告

江見義彦

外四名

右原告ら訴訟代理人弁護士

吉田竜一

竹嶋健治

前田正次郎

高橋敬

小沢秀造

被告

赤穂市長

北爪照夫

右訴訟代理人弁護士

滝澤功治

友廣隆宣

小越芳保

主文

一  被告が、アース製薬株式会社に対して行っている水道供給につき、平成三年九月二日にした特定事業者開発負担金の賦課・徴収に際し、二九九万六〇〇〇円の賦課・徴収を怠っている事実、川崎炉材株式会社に対して行っている水道供給につき、平成三年九月二日にした特定事業者開発負担金の賦課・徴収に際し、五万九〇〇〇円の賦課、徴収を怠っている事実、正同化学工業株式会社に対して行っている水道供給につき、平成三年九月二日にした特定事業者開発負担金の賦課、徴収に際し、二〇八二万六〇〇〇円の賦課、徴収を怠っている事実、タテホ化学工業株式会社に対して行っている水道供給につき、平成三年九月二日にした特定事業者開発負担金の賦課、徴収に際し、二九六万六〇〇〇円の賦課、徴収を怠っている事実、住友セメント株式会社に対して行っている水道供給につき、平成三年九月二日にした特定事業者開発負担金の賦課、徴収に際し、一七五〇万三〇〇〇円の賦課、徴収を怠っている事実が、それぞれ違法であることを確認する。

二  原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用は、これを四分し、その三を原告らの負担とし、その余は被告の負担とする。

事実及び理由

第一  請求

被告が、アース製薬株式会社に対して行っている水道供給につき、平成三年九月二日にした特定事業者開発負担金の賦課、徴収に際し、一〇五〇万二〇〇〇円の賦課、徴収を怠っている事実、川崎炉材株式会社に対して行っている水道供給につき、平成三年九月二日にした特定事業者開発負担金の賦課、徴収に際し、七二〇万九〇〇〇円の賦課、徴収を怠っている事実、正同化学工業株式会社に対して行っている水道供給につき、平成三年九月二日にした特定事業者開発負担金の賦課、徴収に際し、四七五二万六〇〇〇円の賦課、徴収を怠っている事実、太陽鉱工株式会社に対して行っている水道供給につき、平成三年九月二日にした特定事業者開発負担金の賦課、徴収に際し、二七五万九〇〇〇円の賦課、徴収を怠っている事実、タテホ化学工業株式会社に対して行っている水道供給につき、平成三年九月二日にした特定事業者開発負担金の賦課、徴収に際し、六一四万一〇〇〇円の賦課、徴収を怠っている事実、住友セメント株式会社に対して行っている水道供給につき、平成三年九月二日にした特定事業者開発負担金の賦課、徴収に際し、三六四九万円の賦課、徴収を怠っている事実がそれぞれ違法であることを確認する。

第二  事案の概要

一  本件は、被告が特定事業者開発負担金の算定に当たり、基準水量の解釈を誤った結果、特定事業者に対して負担金を規定より少なく賦課、徴収しているのは違法であるとして、赤穂市の住民である原告らがその違法確認を求めた住民訴訟に関する事案である。

二  争いのない事実

1  当事者

(一) 原告らは、兵庫県赤穂市の住民である。

(二) 赤穂市は、昭和四〇年以前より水道供給事業を営んでおり、被告は、右水道供給事業に関して供給契約の締結や料金の徴収等の一切の権限を有し、赤穂市水道事業給水条例(以下「条例」という。)に基づいて水道料金の徴収を行っているほか、条例及び特定事業者の給水及び特定事業者開発負担金に関する規程(以下「規程」という。)に基づき、使用予定水量が常時一月につき三〇〇〇立方メートル以上使用する製造業(物品の加工、修理業を含む。)及びサービス業(公用及び病院を除く。)を含む事業場(ただし、施設の規模、給水装置等によっては常時一月につき三〇〇〇立方メートル以上の使用水量になることが明らかに推定されるものを含む。)等の用に使用する者を特定事業者に指定した上(条例一五条二項)、右特定事業者に対し、特定事業者開発負担金の賦課、徴収を行う権限を有している。

(三) アース製薬株式会社(以下「アース製薬」という。)は、被告との間で水道供給契約を締結し、赤穂市から水道の供給を受けている者であるが、昭和四七年六月一日から、被告より、条例、規程に基づき特定事業者の指定を受けている。

(四) 川崎炉材株式会社(以下「川崎炉材」という。)は、被告との間で水道供給契約を締結し、赤穂市から水道の供給を受けている者であるが、昭和五〇年九月ころから、被告より、条例、規程に基づき特定事業者の指定を受けている。

(五) 正同化学株式会社(以下「正同化学」という。)は、被告との間で水道供給契約を締結し、赤穂市から水道の供給を受けている者であるが、昭和四七年六月一日から、被告より、条例、規程に基づき特定事業者の指定を受けている。

(六) 太陽鉱工株式会社(以下「太陽鉱工」という。)は、被告との間で水道供給契約を締結し、赤穂市から水道の供給を受けている者であるが、昭和四七年六月一日から、被告より、条例、規程に基づき特定事業者の指定を受けている。

(七) タテホ化学工業株式会社(以下「タテホ化学」という。)は、被告との間で水道供給契約を締結し、赤穂市から水道の供給を受けている者であるが、昭和四七年六月一日から、被告より、条例、規程に基づき特定事業者の指定を受けている。

(八) 住友セメント株式会社(以下「住友セメント」という。)は、被告との間で水道供給契約を締結し、赤穂市から水道の供給を受けている者であるが、昭和四七年六月一日から、被告より、条例、規程に基づき特定事業者の指定を受けている(以下、アース製薬、川崎炉材、正同化学、太陽鉱工、タテホ化学、住友セメントの六社を併せて「本件六社」という。)。

2  監査請求

原告らは、平成三年五月二四日、兵庫県赤穂市監査委員に対し、現行の基準水量を改め、相当の特定事業者開発負担金を賦課、徴収するよう勧告することを求めて監査請求をしたところ、平成三年七月八日、赤穂市監査委員は、原告らの監査請求は理由があると認め、被告に対し、「条例及び規程に基づき、常時一月に使用する最大水量実績が基準水量を上回っている一部の特定事業者に対して、速やかに相当の特定事業者開発負担金を賦課、徴収するよう勧告する。本件に関しては、過去の定期事務監査において、注意を喚起してきたところであるが、十分な対応がなされず、今回の住民監査請求の事態を惹起したことは誠に遺憾である。今回のような事態が繰り返されることのないよう、適正な事務処理について強く要望する。」旨勧告した。

3  被告が勧告に基づき講じた必要な措置の内容

(一) 被告は、平成三年九月二日、前記2の勧告を受けて、本件六社の基準水量をそれぞれ増量変更するとともに、本件六社に対し、増量分に相当する特定事業者開発負担金合計一億二二三七万五〇〇〇円を賦課し、右金員を五年間の分割納入の方法により徴収する措置を講じた(以下「本件処分」という。)。

(二) 今回賦課された特定事業者開発負担金の内訳は、次のとおりである。

アース製薬 一二七二万七〇〇〇円

川崎炉材 二三一万四〇〇〇円

正同化学 四六八一万四〇〇〇円

太陽鉱工 六二三万円

タテホ化学 二八四八万円

住友セメント 二五八一万円

合計 一億二二三七万五〇〇〇円

三  被告の主張

1  本件処分に至る経緯

(一) 赤穂市水道事業においては、第五次拡張事業の費用が水道事業会計を圧迫することが予測されたので、大口の使用者である特定事業者の新規の給水申込みがあったときには決定された基準水量に応じて、既に従前から特定事業者に指定され、基準水量の決定を受けている者については、当該基準水量が増量されたときに、特定事業者開発負担金を賦課することとしたが、従前、特定事業者ごとに決定されていた基準水量が、実使用量と一致していなかったので、実使用量に基づいて基準水量を変更することとし、被告は、昭和五〇年八月二〇日付けで、既に特定事業者の指定を受けていたアース製薬ほか一四社に対し、基準水量を変更する旨決定し、通知した。

右変更内容は、昭和四九年一〇月から昭和五〇年三月までの使用実績に基づいて決定したものであるが、概ね従前の基準水量を下回るものであったので、急激な基準水量の減量変更により、特定事業者の業務の遂行に支障がないように、昭和五二年三月三一日までに使用水量に増減があった場合は、その使用実績に基づいて更に変更した上で最終的に確定することとし、この変更の上限を画した水量を「但書基準水量」として、昭和五〇年八月二〇日付けで基準水量の変更を通知する際、併せて通知した。

(二) しかし、被告が昭和四九年一〇月から昭和五〇年三月という短期間の使用実績に基づいて基準水量を変更したことについて、特定事業者の反発が極めて強く、結局、基準水量の最終確定はできなかった。

昭和五三年、条例の一部が改正され、特定事業者の基準が定められるとともに、規程が新しく制定されたが、特定事業者開発負担金の賦課の前提となる基準水量の確定について、理解が得られず、特定事業者開発負担金を賦課することは事実上できなかった。

(三) 川崎炉材については、昭和五〇年九月一一日付けで、新たに特定事業者の指定をし、基準水量を一月当たり三〇〇〇立方メートルに決定した。

(四) 被告は、今般、基準水量が最終確定していなかったアース製薬、正同化学、太陽鉱工、タテホ化学、住友セメントの五社については、次の手法によって基準水量を最終的に確定した。

(1) 昭和五〇年八月二〇日から昭和五二年三月三一日までの間の常時使用した最大水量と昭和四七年六月一日から昭和五〇年三月三一日までの常時使用した最大水量を比較対照して、より大なる水量をとり、その数値が前記但書基準水量を上回るときは但書基準水量を上限とし、逆にその数値が昭和五〇年八月二〇日付けで変更された基準水量をも下回るときは、当該基準水量をもって、確定基準水量とする。

(2) 各年度ごとに、年間平均使用水量以上の水量を使用した月の使用水量を平均した水量をもって規程三条三号に規定する「常時使用する最大水量」とし、これが最大となる年度の水量とする。

(3) 右算定の結果、最終確定された各特定事業者の基準水量は、次のとおりであり、右の算定方法により算出した結果を一覧表にまとめたのが別紙1であり、各特定事業者ごとに、使用実績を算出した基礎となる使用量及びその算出経過を記載したのが別紙2ないし6である。

アース製薬 二万四〇〇〇立方メートル

正同化学 三万九〇〇〇立方メートル

太陽鉱工 一万立方メートル

タテホ化学 二万立方メートル

住友セメント 一万三九〇〇立方メートル

(五) さらに、被告は、本件六社について、今般、次の手法によって基準水量を算定の上、増量変更し、当該増加基準水量に相当する特定事業者開発負担金を賦課した。

(1)① 赤穂市水道事業においては、第五次拡張事業の進展に伴い、昭和六一年度から、取水能力が日量六万一〇〇〇立方メートルに達し、ほぼ安定給水することができることになったので、昭和六一年度から平成二年度までの五年間の使用実績に基づき算定する。

② 右五年間の各年度ごとに、年間の平均使用水量以上の水量を使用した月の利用水量を更に平均し、各年度ごとの常時使用する最大水量を算出する。

③ ②で求めた水量のうち、最大となる年度の水量をもって、変更後の基準水量とする。

(2) 右算定の結果、変更された各特定事業者の基準水量は、次のとおりであり、右の算定方法により算出した結果を一覧表にまとめたのが、別紙7、各特定事業者ごとに昭和六一年度から平成二年度までの使用実績を算出した基礎となる使用量及びその算出経過を記載したのが別紙8及び9である。

アース製薬 二万八三〇〇立方メートル

川崎炉材株式会社第二工場 三八〇〇立方メートル

正同化学 五万四八〇〇立方メートル

太陽鉱工 一万二一〇〇立方メートル

タテホ化学 二万九六〇〇立方メートル

住友セメント 二万二六〇〇立方メートル

2  変更基準水量の算定基準について

(一) 基準水量を増量変更する場合の変更基準水量は、常時使用する最大水量であることが必要であるが、特定事業者制度が、限られた給水能力の中で各需要者に安定的に給水することを目的とする制度であり、基準水量は水道事業全体の供給能力及び配水計画を勘案して決定すべきものであることからすれば、特定事業者の年間を通じた平均使用水量を算出した上、当該平均水量を上回る使用水量を記録した月の使用水量の更に平均を求め、これをもって常時使用する最大水量と解するのが相当である。

このような解釈に基づく処理結果は、偶発的に生ずる使用水量の急激な増加及び減少の結果を捨象する点で、基準水量の安定化に資するとともに、長期を見通したとき、常時使用する水量は、この水量の範囲内で発現する可能性が高く、かつ、頻度が高いものであるから、規程三条三号本文の文言である「常時」使用する水量という用語に最も適合した解釈であり、この使用水量域の中で最大値をとることが、「常時使用する最大水量」という用語に最も適合した解釈である。

(二) 原告らが主張するように、一定の期間内における最大使用水量、すなわち、いわば瞬間最大風速に等しい数値をもって常時使用する最大水量であるとし、ひいては基準水量として決定しなければならないものとすれば、各特定事業者において、例え一か月でもたまたま何らかの事情によって偶発的に最大水量を記録すれば、それが直ちに基準水量となり、当該特定事業者のいわば既得権となる可能性があり、特定事業者の実際使用する水量と基準水量とがかけ離れて給水の実態が把握しにくくなり、実際に使用もしない基準水量に基づき、新たに水源開発等の施設拡張が必要となること等の不都合が生じ、水道事業全体の供給能力や配水計画はないがしろにされ、およそ安定供給の精神に反する結果となる。

3  基準水量の変更決定に当たり但書基準水量を考慮することの可否

昭和五〇年八月二〇日の基準水量の決定に当たり、但書基準水量を付すことの決定は、被告が条例一五条四項及び旧規程五条三項に基づいて、当該特定事業者の基準水量を変更する際の判断の過程で行われたものであるが、右各条項に基づき、被告に与えられた一定の裁量権の範囲内においてされたものである。

また、今般被告が行った従前の基準水量の確定の過程で但書基準水量をいかに考慮するかも、被告の裁量の範囲内のものである。

4  漏水について

被告は、今般、基準水量を変更するに際し、漏水が認められる期間は除外したが、水道事業においては、給水の際の漏水は、不可避のことであるが、漏水により、一時的に使用水量が増大したことが認められるときは、基準水量を設けた制度の目的からして、これを除外すべきことは当然であり、これをどのように認定するかは、被告の裁量の範囲内のことである。

四  原告らの主張

1  基準水量の最終確定の時期

被告は、昭和五〇年八月二〇日付けで基準水量を変更する旨のみを通知していたわけではなく、各特定事業者の変更基準水量も通知しているし、監査結果が出されてからも、被告自身、現行の基準水量は昭和五〇年に決定している旨を監査委員に通知している。

そして、昭和五〇年八月二〇日にされた通知は、単に変更する旨の通知ではなく、具体的な変更基準水量の数値が通知されているのであり、そうである以上、通知に先行した被告の決定があったはずである。そして、その決定に基づいて通知がされている以上、右通知により変更基準水量が最終的に確定されたことは明らかである。

仮に、従前の基準水量が平成三年九月二日付けの通知により最終確定したのであれば、被告は、実に一六年もの間、変更基準水量を確定していなかったことになり、行政の怠慢であり、そのこと自体違法不当の評価を免れないし、通知のあとに確定することになり、確定手続自体が、条例の定めと逆転し、違法となる。

さらに、被告は、昭和五〇年八月二〇日付けで基準水量の変更を通知する際、昭和五二年三月三一日までに使用水量に増減があった場合は、その使用実績に基づいて更に変更した上で最終的に確定する予定で、この変更の上限を画した水量を但書基準水量として併せて通知したと主張するが、次の理由で、被告が、但書基準水量を考慮していたとは認められない。

(一) 被告はもとより、多くの特定事業者は、昭和五〇年八月二〇日付けの基準水量決定通知書を既に紛失しているが、もし、昭和五〇年八月二〇日に基準水量の最終確定がされていないのであれば、そのような事態は考えられない。

(二) 昭和五〇年八月二〇日通知の基準水量が最終確定していないのであれば、当然に、監査委員から勧告がされるはずであるが、定期事務監査の結果報告をみても、基準水量を最終確定するようになどとはどこにも指摘されていない。

(三) 特定事業者開発負担金の算定基礎額は、昭和五六年四月一日に五万八〇〇〇円に、昭和五九年四月一日に八万六〇〇〇円に、平成三年八月一日に八万九〇〇〇円にそれぞれ改定されているが、算定基礎額は、特定事業者の基準水量の合計が決まっていないと明らかにできない数字であり、算定基礎額が改定されていること自体、昭和五六年の時点で既に基準水量が確定していたことを意味する。

2  但書基準水量を考慮することの可否

仮に、被告が但書基準水量を考慮して、昭和五〇年八月二〇日に通知した基準水量を最終的に確定したとしても、右決定は、次の理由で違法である。

(一) 旧規程五条が基準水量の変更手続について定めている以上、時の経過により実際の使用水量が基準水量と適合しなくなったような場合には、基準水量を変更すれば足りるのであって、同条二項が基準水量は過去の使用実績に基づいて変更されるべきことを明記している以上、昭和五〇年八月二〇日段階の基準水量の確定に際し、昭和五二年三月三一日までという将来の使用実績を考慮することができないことは明らかであるから、従前の基準水量を但書基準水量を考慮して決定することは許されない。

(二) 被告は、条例一五条四項、旧規程五条三項に基づき与えられた裁量権の範囲内で但書基準水量を決定した旨述べているが、課税標準の一つである基準水量の確定に際し、条例、規程上何らの根拠もない但書基準水量なるものを考慮することは租税法律(条例)主義に反し違法である。

また、条例一五条四項、旧規程五条三項にいう「必要があるとき」が、現実の使用実績と基準水量が適合しなくなった場合をいうことは明らかであり、また「基準水量を変更することができる」としている点も、変更するか否かの効果について裁量を認めていると解する余地はあるにしても、何を基準にどのように変更するかという要件についてまで裁量を認めるものではあり得ない。

(三) 但書基準水量を考慮すること自体が水の安定的供給を著しく阻害するものであり、このような但書基準水量を考慮することには、何ら合理性が認められない。

3  変更基準水量の算定方法について

基準水量を変更する場合の変更基準水量の数値は、常時使用する最大水量をいうと解すべきであるが、常時使用する最大水量とは、次の理由で最大使用水量を示している月の数値とすべきであり、被告のように、年間を通じて平均使用水量を算出した上、当該平均水量を上回る使用水量を記録した月の使用水量の更に平均とするのは、失当である。

(一) 各事業自体の給水能力には限度があるから、各使用者の使用する水量の合計が給水能力を超過すれば、すべての利用者に対する水道の安定的供給は実現できないので、被告とすれば、各使用者が揃って最大限に水を使用しても安定的に供給できるか否かを確定する必要があるが、各使用者の瞬間最大風速に等しい数値をもって算出される最大使用水量の合計が明らかにされなければ、安定的供給を図りうるのか否かも明らかにできない。

したがって、最初に最大使用水量を確定して。これを基本に給水能力等を考慮して基準水量を決定するということは極めて合理的である。

(二) 条例一五条一項にいう「使用水量」と規程三条にいう「常時使用する最大水量」とは同義であると解すべきであるところ、条例の目的は給水の適正の保持にあるのであるから、最大水量を明らかにしておかなければ、給水の適正保持は図り得ない。

被告としては、まず、使用最大水量を確定した上で、それをそのまま承認すると、給水能力、配水計画に支障があると認められる場合に、その範囲内で基準水量を決定すべきである。

(三) 被告のように常時使用する最大水量を平均値としてとらえれば、特定事業者がある時間帯に揃って平均を大幅に上回る量を使用したときは、一般生活用水の安定的供給が阻害される結果が生じる。

これに対し、原告らの解釈によれば、各特定事業者の最大使用水量が常に六万一〇〇〇立方メートルから一般生活用水の見込み使用水量を差し引いた範囲内で基準水量が確定されるのであるから、一般生活用水の安定的供給が阻害されるような事態は基本的には生じ得ないのである。

(四) 本件条例の目的は給水の適正の保持だけでなく、給水工事の費用負担について必要な事項を定めるという点にもある。

すなわち、特定事業者開発負担金制度は、水道事業の供給能力を増加させるため、新規又は増量する特定事業者に対し、開発負担金として必要な第五次拡張事業の水道施設拡張費の相当額の負担を求め財源確保を図ろうとしたものである。

したがって、水道施設の拡張が一般市民の水道料金の値上げに跳ね返ることのないよう、あるいは一般市民が納める税金によって実施されることのないように、特定事業者開発負担金は確実に賦課・徴収されなければならないのであり、開発負担金の額を抑えるような解釈自体、特定事業者開発負担金制度の趣旨に反する。

被告は、専ら給水の適正の保持という観点からのみ常時使用する最大使用水量を解釈しており、本件条例の目的が給水工事の費用負担について必要な事項を定める点にもあることを捨象している。

(五) 条例、規程は、ともに、水道法一四条一項に基づいて制定されたものであり、条例、規程の解釈についても、水道法の解釈が参照されるべきところ、水道法一五条二項は、「水道事業者は、当該水道により給水を受ける者に対し、常時水を供給しなければならない。ただし、四〇条一項の規定による水の供給命令を受けたため、又は災害その他正当な理由があってやむを得ない場合には、給水区域の全部又は一部につきその間給水を停止することができる。」として、「常時」という語を使用しているのであるが、ここでは「常時」が異常事態を除くという趣旨で使用されていることが明らかである。

(六) 最大とは、最も大きいことであって、中間的な値を意味する平均とは相容れない概念である。

被告の制定する条例等においても、平均的な数字を用いる場合は、前六か月間の平均使用水量となっているし、負担金に関しても赤穂市水道事業建築物負担金規程四条では、建築物負担金の算定基準は算定基礎額×一日平均給水量と規定して、平均という語を用いると共に平均値を求める期間をも明確にしているのであるから、平均という語を用いていない以上、「常時」という語に「平均」という意味をもたせることはできず、常時とは水道管の破裂等の事故によって多量の水を使用したような異常時を除く意味をもつにすぎないというべきである。

(七) 本件監査請求についての監査結果が公表されるまでは、被告も常時使用する最大水量について、原告らと同様の解釈をしていたことは、次の事実から明らかである。

(1) 被告は、昭和五〇年八月二〇日に基準水量の変更をしたとき基礎とした使用実績は昭和四九年一〇月から昭和五〇年三月までの六か月間であると主張しているが、アース製薬、タテホ化学については、この間の最大使用水量を基礎に基準水量を変更している。

(2) 関西電力の基準水量は一日最大受水量を基礎に決定されている。

(3) 家島分水の基準水量は、昭和五四年に日量六六〇立方メートルから一〇〇〇立方メートルに変更され、昭和五七年には日量四〇〇〇立方メートルに変更されたが、昭和五七年の日量四〇〇〇立方メートルは一日最大給水量であり、被告は、家島分水からこの四〇〇〇立方メートルを基礎に負担金を賦課・徴収している。

(4) 平成三年六月一九日の民生生活常任委員会において、松原貞水道部長(以下「松原部長」という。)は、特定事業者開発負担金の経緯及び経過について「現在の使用水量であるが、これについては過去五年間のうちで一番使用量の高い月、つまり一番高い値をとらえてこれを対象に負担金を徴収するものである。」と説明していた。

(5) 監査結果において、監査委員は、「地方自治法二二四条の規定に基づき月最大使用水量が基準水量を越えた増量分については、開発負担金を賦課、徴収すべきが妥当である。」と指摘している。監査に際しては、松原部長らも事情聴取を受けているのであり、監査委員の右指摘は、松原部長らが原告らの住民監査請求に基づく監査の段階でも、文字通り最大使用水量を基準水量として特定事業者開発負担金を賦課、徴収すべき意向をもっていたことを如実に示している。

(6) 桃井製鋼は、平成三年一二月一〇日、基準水量を一万二〇〇〇立方メートルから五〇〇〇立方メートルに減量する旨の申請をし、平成五年一月一九日には、基準水量を五〇〇〇立方メートルから四〇〇〇立方メートルに減量する旨の申請をしているが、桃井製鋼の基準水量の減量申請が、過去一年間の使用実績と将来の一年間の使用見込量の最大の月を基準にされていることは基準変更申請書から明らかである。

同様に、塩野義製薬の基準水量も、平成五年一月二七日に、五万八〇〇〇立方メートルから五万一〇〇〇立方メートルに減量変更されているが、これも過去一年間の使用実績と将来の一年間の使用水量見込量の最大の月である平成五年六月の五万〇九七八立方メートルを基礎にされていることが明らかである。

4  漏水を除外することの適否

条例の目的が給水の適正保持という点にのみあるならば、漏水を除外することにも一定の合理性がある。

しかし、条例の目的は給水の適正保持とともに給水工事の費用負担について必要な事項を定めることにもあり、基準水量は特定事業者開発負担金との関係では課税基準となるのであるから、仮に、基準水量の確定に際して漏水を除外するのであれば、租税法律主義により、本件条例、規程にその旨が明記されていなければならず、被告の裁量のみによって漏水を除外することは許されない。

仮に、裁量により漏水を除外することが許されるにしても、被告は、川崎炉材について五か月連続して漏水しているものをすべて除外しているのであるが、漏水による水道料金の減額についてでさえ、一年間に一回の申請であること等の厳しい要件が課されているのに、五か月連続の漏水を全て除外するのは、大企業のみを特に有利に扱うものであり、被告に許された裁量権を逸脱・濫用したものとして違法というべきである。

5  基準水量の確定及び変更についての被告の裁量

特定事業者開発負担金は、国又は地方公共団体が、特定の公益事業を行う場合に、その事業の経費にあてるため、その事業に特別の関係を有する者(受益者)に対して賦課される金銭であり、特定の事業に特別の関係のある者がその事業の経費を分担するものであるという点では租税と異なる面があるが、しかし、公共の経費にあてるため強制的に国民から徴収するものである点で、租税とその実質を同じくするから、特定事業者開発負担金の賦課・徴収は憲法八四条の適用を受ける。

憲法八四条の租税法律主義は、地方税に関しては条例主義となるが、その内容である課税要件明確主義が妥当するから租税法においては、行政庁の自由裁量を認めることは、原則として許されないというべきである。

したがって、特定事業者開発負担金についても、憲法八四条の適用があることは明らかであるところ、基準水量は、特定事業者開発負担金の賦課・徴収との関係では、いわば、課税基準となるものであるから、その確定の方法、手続は、条例及びその委任を受けた規程に従わなければならず、被告の裁量を認める余地はないといわなければならない。

6  被告の特定事業者開発負担金の賦課徴収の懈怠

(一) 被告には、特定事業者の常時使用する最大水量が基準水量を上回っている場合、条例一五条四項、規程四条三項に基づき、基準水量を変更した上、規程七条(2)、規程九条に従って算出された金額を特定事業者開発負担金として、賦課・徴収する義務がある。

(二) アース製薬、正同化学、太陽鉱工、タテホ化学、住友セメントの五社については、昭和五〇年八月二〇日に、川崎炉材については、昭和五〇年九月ころに、それぞれ被告によって基準水量として定められた数字を「基準水量」とし、赤穂市水道部作成の五年間水道実績一覧表(甲第七号証)により、本件六社の昭和六一年度から平成二年度までの各月の水道使用量を比較検討した上、最大使用水量を示している月の数字を常時使用する最大水量として算出したところ、本件六社の昭和六一年度から平成二年度までの常時使用する最大水量は別紙10Bのとおりそれぞれ右基準水量を大幅に上回っていたのであるから、被告には、条例一五条四項、規程四条三項に基づき、本件六社の基準水量をそれぞれ変更した上、本件六社から、規程七条(2)、九条に従って算出された特定事業者開発負担金を次のとおり、賦課、徴収すべき義務があった。

① アース製薬 二三二二万九〇〇〇円

② 川崎炉材 九五二万三〇〇〇円

③ 正同化学 九四三四万円

④ 太陽鉱工 八九八万九〇〇〇円

⑤ タテホ化学 三四六二万一〇〇〇円

⑥ 住友セメント 六二三〇万円

合計 二億三三〇〇万二〇〇〇円

(三) しかるに、被告は、本件六社の基準水量を常時使用する最大水量に基づいて変更することなく、平成三年九月二日まで、本件六社に対する特定事業者開発負担金の賦課、徴収を怠ってきた。

(四) 被告が本件六社に対し賦課徴収すべき特定事業者開発負担金は(二)記載のとおりであり、平成三年九月二日に賦課した分を除いて、なお、被告は、一億一〇六二万七〇〇〇円の事業者開発負担金の賦課、徴収を怠っており、その内訳は、次のとおりである。

① アース製薬 一〇五〇万二〇〇〇円

② 川崎炉材 七二〇万九〇〇〇円

③ 正同化学 四七五二万六〇〇〇円

④ 太陽鉱工 二七五万九〇〇〇円

⑤ タテホ化学 六一四万一〇〇〇円

⑥ 住友セメント 三六四九万円

(五) 被告が(四)記載の差額合計一億一〇六二万七〇〇〇円の特定事業者開発負担金を賦課、徴収しないことは、地方自治法二四二条一項所定の違法に公金の賦課、徴収を怠る事実に該当する。

五  争点

1  被告が昭和五〇年八月二〇日に通知した変更基準水量の確定時期

2  被告が平成三年九月二日にした基準水量変更の適法性

3  被告が徴収すべき特定事業者開発負担金の額

第三  争点に対する判断

一  争点1について

1  甲第二号証ないし第四号証、第三二号証、第三三号証、第三八号証、第四一号証、第四六号証、第四七号証、証人松原貞の証言及び原告八木進本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

(一) 被告は、昭和四六年三月の条例の改正による特定事業者制度の創設及び昭和四七年四月の旧規定の制定に伴い、アース製薬、正同化学、太陽鉱工、タテホ化学、住友セメント(以下「本件五社」という。)を含む一四社について、昭和四七年六月一日、特定事業者の指定をするとともに、当時の使用実績と将来の予測に基づいて、各社ごとに基準水量を決定して通知した。

(二) しかし、昭和五〇年になって、当初決定された基準水量と実際の使用水量との間に相当開きが生じたことから、被告は、本件五社について昭和四九年一〇月から昭和五〇年三月までの使用実績と将来の使用水量の予測に基づいて、基準水量を変更することとし、次のとおり、昭和五〇年八月二〇日付けで、従前の基準水量を変更する旨の通知をした。

アース製薬 二万三〇〇〇立方メートル

正同化学 三万二〇〇〇立方メートル

太陽鉱工 一万立方メートル

タテホ化学 一万九〇〇〇立方メートル

住友セメント 八〇〇〇立方メートル

(三) 右変更内容は概ね従前の基準水量を下回るものであったが、変更当時はオイルショックの最中ということもあり各社の使用水量も不安定であったことから、被告は、暫定期間を設けその期間の使用実績に基づいて基準水量を更に変更することとし、昭和五〇年八月二〇日付けの通知書のその他の欄に、但書基準水量(昭和五二年三月三一日までに使用水量に増減量があった場合の変更上限水量)を記載して通知した。

(四) その後、被告は、平成三年九月二日付けで、本件五社について、但書基準水量に基づいて、基準水量を確定した旨及び右数値を通知し、同日、更に、昭和六一年度から平成二年度までの常時使用する最大使用水量に基づき、基準水量を更に変更した(以下「今般の基準水量」という。)。

(五) 被告は、川崎炉材に対し、昭和五〇年九月ころ、特定事業者の指定をするとともに、基準水量を三〇〇〇立方メートルと決定して通知した。

2 右のとおり、被告は、昭和四七年に最初に決定した従前の基準水量が昭和五〇年には、使用実績を相当下回っていたため、基準水量の変更をすることにしたものの、当時は、オイルショック等で企業の使用水量が不安定な時期であったので、昭和五〇年八月二〇日付けの通知書に同日以降昭和五二年三月三一日までに使用水量に増減量があった場合の変更上限水量(但書基準水量)を記載して通知することとしたのであるが、昭和五〇年八月二〇日当時の条例及び規程は、特に基準水量の変更について変更決定のほかに特別な確定手続を要求していないことからすれば、基準水量の変更はあったが確定はしていないという状態はあり得ず、昭和五〇年八月二〇日の被告の変更決定によって、従前の基準水量は一旦確定的に変更されたと考えるのが相当である。

3  被告は、昭和五二年三月三一日までに使用水量に増減があった場合はその使用実績に基づいて更に変更をした上で最終的に基準水量を確定する趣旨であったから、昭和五〇年の変更は暫定的なものであり、従前の基準水量が確定的に変更されたのは平成三年九月二日である旨主張するが、甲第一二号証ないし第一五号証、第三一号証ないし第三三号証によれば、赤穂市監査委員による定期事務監査の結果報告には、昭和五〇年八月二〇日に変更決定が行われた旨の記載があるし、監査委員は、基準水量の見直しを求めているだけで、基準水量の最終確定は求めていないし、甲第三号証によれば、監査委員の勧告に対して、被告自身が、現行の基準水量は、昭和五〇年八月二〇日をもって決定している旨を通知している。

さらに、証人松原貞の証言によれば、被告は、昭和五〇年から平成三年九月まで基準水量の変更をしなかった事実が認められるのであり、昭和五〇年の変更が暫定的なものであるならば、一五年以上も確定的な変更をせずに放置しておくことは通常考えられないから、被告が昭和五〇年の変更を暫定的なものとする趣旨であったと認めることはできないし、被告は、昭和五〇年八月二〇日に変更の通知をしているのであって、通知をした後に基準水量の変更が確定するというのは、不自然である。

また、甲第三八号証、第四一号証、第四六号証、第四七号証によれば、被告は右通知書に基準水量の変更が暫定的なものである旨の記載は何らしていないし、但書基準水量が右通知書のその他の欄に記載されていた点についても、右事実から、被告が昭和五二年三月三一日以降に再び基準水量を変更するつもりであったと推測することはできても、基準水量の変更自体が暫定的なものであったと解することはできない。

したがって、この点についての被告の主張は採用することができない。

4  以上のとおりであって、本件五社について昭和四七年に決定された従前の基準水量は、昭和五〇年八月二〇日に確定的に変更されたのであるから、但書基準水量を考慮することの可否等について判断するまでもなく、平成三年九月二日に行われた基準水量の最終確定及びその旨の通知は法的に意味がないと解するのが相当である。

この点、平成三年九月二日の最終確定を新たな基準水量の変更と解する余地もないではないが、被告は、平成三年九月二日に、最終確定した基準水量を変更する決定もしたのであり、最終確定を新たな基準水量の変更と解すると、一日のうちに、二度の基準水量の変更が行われたことになって不自然であるから、右最終確定は法的に無意味であって、昭和五〇年八月二〇日に変更された基準水量が平成三年九月二日に一度だけ変更されたと解するのが相当である。

二  争点2について

1  甲第一号証、第三号証、第四号証、第七号証、第一八号証、第二六号証、第三八号証、第四一号証、第四五号証ないし第四七号証、乙第二号証ないし第四号証、証人松原貞の証言及び原告八木進本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

(一) 特定事業者制度の沿革

(1) 赤穂市の上水道の歴史は古く江戸時代にさかのぼり、水道事業は、昭和一五年に国の事業認可を受け、昭和一九年一二月から給水を開始したが、その規模は、給水を赤穂用水に求め、給水人口二万五〇〇〇人、一日最大給水量三七五〇立方メートル、一人一日最大給水量一五〇リットルであった。

その後、簡水事業の布設認可、他地区との合併、簡水の継承等が行われたが、急激な経済成長と生活水準の向上に伴い、逐次水需要は増加し、加えて、西浜塩田跡地への工場誘致計画が進んだため、水道事業の拡張が必要となった。

そして、昭和三一年の第一次拡張工事、昭和三三年の第二次拡張工事を経て、昭和三六年度から昭和三九年度までの第三次拡張事業で木津水源地の完成、昭和四〇年度から昭和四四年度までの第四次拡張事業で中央配水池、御崎配水池等が整備され、安定給水への水道基盤が築かれていった。

(2) 赤穂市の水道事業においては、創設以来、需要者について、一般市民、事業者を問わず一律の取扱をしてきており、昭和三四年一〇月八日に制定された条例においても、水道料金の算定方法について家事用、営業用、浴場営業用、特定事業用、娯楽用等の区分は設けられたが、料金以外について格別の規定は設けられていなかった。

しかし、産業の発展に伴って、事業者に対する給水量が次第に増大し、全体の給水量の中に占める割合が高くなると、これら事業者の水道使用量の増減が全体の配水計画の策定や給水に影響を及ぼすようになったことから、これらの事業者については、一般市民とは別異の取扱をすることが適当であると思料されるに至り、昭和四一年一二月一日、「特定事業場の取扱に関する規程」が制定された。

同規程は、工場、旅館、社会保険保養施設及び病院のうち、使用水量が常時一か月五〇〇立方メートルを超えることが過去一年間の実績又はその事業場等の事業の種類、規模及び給水装置等によって明確なものを特定事業場として指定し、これらの事業場に対する給水を適切に調整することにより、安定的に給水することを目的としていたが、具体的な調整方法の内容については規定されていなかった。

(3) その後、経済の発展に伴い、右特定事業場のうち、特に赤穂市の臨海部に立地している大企業等大口の使用者に対する給水量が飛躍的に増大し、これらの特定事業場に対する給水は、全体の給水量に占ある割合が著しく高い上に、その稼働状況は、社会的、経済的環境の変化に大きく影響され、年間を通じてみても、月によって使用量が大きく変動することがあって不安定であることから、これらの特定事業場については特別の取扱をすることとし、昭和四六年三月三一日、条例の改正により、特定事業者に関する制度が新設され、右改正に伴い、前記「特定事業場の取扱に関する規程」が廃止され、昭和四七年四月一四日、新たに「特定事業者の給水に関する規程」(以下「旧規程」という。)が制定された。

右改正にかかる条例において、市長は、市長が特に指定する事業場等の用に使用する者を特定事業者として指定し、このような特定事業者が給水の申込みをするときは、給水の申込みと併せて、その使用計画及び使用水量等を申し出て、市長は、これらの特定事業者の給水の申込みを承認するときは、一月当たりの使用量(基準水量)を定め、また、必要に応じて基準水量を変更することができることとし、付則において、右使用水量は、昭和四六年五月三一日までに特定事業者に通知すると規定されるとともに、旧規程において、特定事業者の指定の要件が規定された。

(二) 特定事業者開発負担金制度創設の経緯

(1) 赤穂市は、給水量の増大に対処するため、昭和四六年度から平成四年度を目標に水需要の予測を給水人口六万五〇〇〇人、一日最大使用水量六万一〇〇〇立方メートル、一人一日最大給水量九三八リットルとして第五次拡張事業を進め、北部上水道の給水人口五八〇〇人、一日最大給水量二八四〇立方メートルと併せ、事業規模を給水人口七万〇八〇〇人、一日最大給水量六万三八四〇立方メートルとする給水体制の整備を図り、右拡張事業は平成四年度に完成した。

(2) 右拡張工事の事業費は、約五〇億円、元利合計で約一〇〇億円と算定されたが、このような膨大な施設拡張費の負担は、水道事業会計を圧迫し、経営が悪化することが予測されたので、右事業費について、各需要家に対し、一般・特定・分水の区分に従い、それぞれに応分の負担を求めることとした。

(3) 昭和五三年三月三一日、本件条例の改正により、特定事業者については、新規の給水申込みがあったときに決定された基準水量に応じて、また、既に従前から特定事業者に指定され基準水量の決定を受けている者については、当該基準水量が増量されたときにおいて、増量にかかる水量に応じて、それぞれ特定事業者開発負担金を賦課することとし、右条例の改正に伴い、同日、規程が制定され、基準水量の決定基準や特定事業者開発負担金の算定基準が規定された。

(三) 特定事業者開発負担金制度の概要

(1) 水道を使用しようとする者は、管理者(赤穂市では、地方公営企業法七条但書及び同法施行令八条の二の規定に基づき、水道事業に管理者を置かず、赤穂市長が水道事業管理者の権限を有しているから、以下の管理者とは市長である。)の定めるところによりあらかじめ市長に申込み、その承認を受けなければならず(条例一五条一項)、その場合において、使用予定水量が常時一月につき三〇〇〇立方メートル以上使用する製造業(物品の加工、修理業を含む。)及びサービス業(公用及び病院を除く。)を営む事業場(ただし、施設の規模、給水装置等によって常時一月につき三〇〇〇立方メートル以上の使用水量になることが明らかに推定されるものを含む。)等の用に使用する者(特定事業者)は、給水の申込みと併せて、その使用計画及び使用水量等を申し出なければならない(同条二項)。

管理者は、特定事業者からの給水の申込みを承認しようとするときは、給水能力及び排水計画等を考慮して、その申込みをした者の一か月当たりの使用水量(基準水量)を定めて承認の通知をする(同条三項)が、管理者は、特定事業者に対し、給水の承認をする場合は、基準水量に相当する水道施設拡張費(特定事業者開発負担金)を負担させることができ(三〇条の三第一項)、これは、基準水量を増量する場合も同様である(同条二項)。

(2) 管理者が特定事業者からの給水の申込みを承認しようとするときは、次の基準によって、基準水量を決定して通知する(規程三条)。

① 水道事業の供給能力及び配水計画において供給可能な水量であること。

② 配水管等の施設能力が供給可能な水量であること。

③ 特定事業者の施設規模、給水装置等によって算出した常時使用する最大水量であること。

(3) 特定事業者が基準水量の変更を申請しようとするときは、基準水量変更申請書を翌事業年度開始の六〇日前までに管理者に提出しなければならず(規程四条一項)、管理者は、右申請書に基づき使用水量の実績等によって基準水量を変更する必要があると認めるときは、基準水量変更通知書により翌事業年度開始の三〇日前までに当該特定事業者に通知する(同条二項)が、管理者は、特定事業者から申請書の提出がない場合においても、使用水量の実績が基準水量を上回っているときは、基準水量を変更することができる(同条三項)。

(4) 特定事業者開発負担金の算定方法等については、規程に委ねられ(条例三〇条の三第三項)、給水を承認する場合には、新たに特定事業者となった使用者に決定した基準水量(ただし、昭和五三年三月三一日以前より給水を受けている使用者にあっては、三〇〇〇立方メートルを控除した量)に相当する水道施設拡張費であり(規程七条一号)、それは、当該基準水量を三〇で除した数字に算定基礎額を乗じた額とされている(同九条)。

基準水量の増量の場合は、当該増加基準水量に相当する水道施設拡張費であり(同七条二項)、当該基準水量を三〇で除した数字に算定基礎額を乗じた額であり、平成三年八月一日以降の算定基礎額は八万九〇〇〇円である(同八条)。

(四) 被告の今般の基準水量の変更

(1) 被告は、平成三年七月八日付けの赤穂市監査委員からの勧告を受けて、本件六社について、次の手法によって基準水量を算定した。

① 赤穂市水道事業においては、第五次拡張事業の進展に伴い、昭和六一年度から、取水能力が日量六万一〇〇〇立方メートルに達し、ほぼ安定給水することができるようになったので、昭和六一年度から平成二年度までの五年間の使用実績に基づき算定する。

② 右五年間の各年度ごとに、年間の平均使用水量以上の水量を使用した月の使用水量を更に平均し、各年度ごとの常時使用する最大水量を算出する。

③ その際、漏水が認められる期間は除外した。

④ ②で求めた水量のうち、最大となる年度の水量(ただし、一〇〇立方メートル未満は四捨五入する。)をもって、変更後の基準水量とする。

(2) 右算定の結果、本件六社の変更基準水量は、次のとおりとなった。

① アース製薬 二万八三〇〇立方メートル

② 川崎炉材株式会社第二工場 三八〇〇立方メートル

③ 正同化学 五万四八〇〇立方メートル

④ 太陽鉱工 一万二一〇〇立方メートル

⑤ タテホ化学 二万九六〇〇立方メートル

⑥ 住友セメント 二万二六〇〇立方メートル

2  被告の基準水量の算定方法の適法性

(一)  前述のように、条例は、特定事業者開発負担金の算定方法については規程に委ねているが、規程には、使用水量の実績が基準水量を上回っているときは基準水量を変更できると規定されているだけで、基準水量を変更する場合の変更基準水量の算定方法については何ら規定されていない。

この点、原告らは、基準水量を変更する場合には、規程三条三号の「常時使用する最大水量」に基づいて変更基準水量を算定すべきであり、常時使用する最大水量とは、一定期間における各月の使用水量を比較した結果最大使用水量を示した月の数値をいうと主張する。

しかし、規程三条は、被告が新たに特定事業者の給水の申込みを承認する場合の基準水量の決定基準を定めたものであり、一旦決定された基準を変更する場合の基準として定められたものではないし、また、規程には、基準水量を変更する場合に同条を準用する旨の規定も設けられていないことからすれば、同条三号の「常時使用する最大水量」を変更基準水量の算定基準とするのは相当でないといわなければならない。

また、規程三条三号は、一号の「水道事業の供給能力及び配水計画において供給可能な水量であること」という基準、二号の「排水管等の施設能力が供給可能な水量であること」という基準と一体となって、特定事業者の基準水量を決定する場合の基準とされているのであるから、三号のみを独立して、変更基準水量の算定基準と解することはできないし、更に、同号には、単に「常時使用する最大水量」と記載されているわけではなく、「特定事業者の施設規模、給水装置等によって算出した」常時使用する最大水量と記載されているのであるから、原告ら主張のように、特定事業者の使用水量の数値から常時使用する最大水量を算出することは相当でない。

したがって、基準水量を変更する場合の増量基準水量の算定方法については、被告が、条例及び条例から委任を受けた規程の趣旨に基づいて決定すべきである。

(二)  そうすると、被告の実施した算定方法が、条例及び規程の趣旨に反しない限り、被告の今般の基準水量の決定は適法であることになる。

そこで、この点について検討するに、前記認定のとおり、赤穂市が条例及び規程において、水量の大口使用者について、特定事業者として指定した上で、基準水量を決定するという制度を導入したのは、産業の発展に伴って、事業者に対する給水量が次第に増大し、全体の給水量の中に占める割合が高くなり、これら事業者の使用水量の増減が全体の配水計画の策定や給水に影響を及ぼすようになったことから、被告としては、特定事業者の使用水量を常に把握して、全体の給水量と特定事業者の使用水量を管理しながら、どのような状況になれば安定給水に支障が生じるかを予測するために、各特定事業者の一月当たりの使用水量の目安として基準水量を決めておく必要があったからである。

被告としては、特定事業者の使用水量が増加して供給能力の限界に近づいてくれば、給水制限や使用水量を抑制するという事態を生じさせる前に、これを予測して新たな水源開発等により、水を確保して、給水の適正保持と安定給水を図らねばならず、赤穂市では、給水量の増大に対処するため、昭和四六年度から第五次拡張事業を進め、右拡張事業は平成四年度に完成したが、膨大な施設拡張費の負担は、水道事業会計を圧迫し、経営が悪化することが予測されたので、被告は、右事業費について、新規の給水申込みがあったときは、その際に決定された基準水量に応じて、また、既に従前から特定事業者に指定され基準水量の決定を受けている者については、当該基準水量が増量されたときにおいて、増量にかかる水量に応じて、それぞれ特定事業者開発負担金を賦課することとしたのである。

このような条例及び規程の趣旨からすると、基準水量を増量した場合の変更基準水量の数値は、水道事業者が、水道事業全体の供給能力及び給水量と各特定事業者の使用水量から、水道の安定給水に支障が生じないか否かを予測・判断するのに適切な数値でなければならないことになる。

そうすると、漏水の認められる期間を除外して、各特定事業者の年間を通じた平均使用水量を算出した上、当該平均水量を上回る使用水量を記録した月の使用水量の更に平均を求めて、変更基準水量とする被告の算定方法は、偶発的に生ずる使用水量の急激な増加及び減少の結果を捨象し、長期間でみた場合に各特定事業者が使用する可能性の高い範囲にある水量を算出できるのであるから、右算定方法に基づいて算出された数値は、水道事業者が、水道事業全体の供給能力及び給水量と各特定事業者の使用水量から、水道の安定給水に支障が生じないか否かを予測・判断するのに適切な数値であるということができる。

したがって、被告の増量基準水量の算定方法の決定は、条例及び規程の趣旨に合致していて適法であると解するのが相当である。

(三)(1)  原告らは、特定事業者開発負担金の賦課・徴収については憲法八四条の適用を受けるから、課税標準となる基準水量の確定方法は条例及びその委任を受けた規程に従わねばならず、被告の裁量を認める余地はないと主張する。

確かに、法律上、水道の使用料に関する事項は条例で定めなければならない(地方自治法二二五条、二二八条)とされ、水道料金、給水装置工事の費用の負担区分その他の供給条件については供給規程により定めなければならない(水道法一四条)とされているが、前述のとおり、特定事業者開発負担金の算定方法については、条例から委任を受けた規程が、算定基準として、算定基礎額に基準水量を乗じて三〇日で除した金額を特定事業者開発負担金とする旨を定めているし、右算定基礎額の算定方法、基準水量を決定する場合の基準及び変更する場合の要件についても規程に定められているから、これらの事項について被告に裁量を認める余地はない。

しかし、規程に定められている基準水量変更の要件が存する場合に、基準水量の具体的算定方法を条例及び規程の趣旨に沿って被告が決定することは、何ら法の趣旨に反しないというべきであるから、原告らの右主張は採用することができない。

(2)  また、原告らは、条例、規程のいずれにも、変更基準水量の決定に当たって、漏水を除外する規定は存しないから、漏水を除外することは許されないし、仮に漏水を除外することが被告の裁量の範囲内として許されるとしても、被告は、川崎炉材について五か月連続して漏水している部分を全て除外しており、裁量権の逸脱若しくは濫用があるとも主張する。

しかし、前述のとおり、被告の増量基準水量の具体的算定方法の決定は、条例及び規程の趣旨に反しないかぎり適法であるが、水道事業全体の供給能力及び給水量と各特定事業者の使用水量から、水道の安定給水に支障が生じないか否かを予測・判断するという基準水量を設けた条例及び規程の趣旨からすると、漏水を除外することは、右趣旨に沿うものであるといえる。

川崎炉材の漏水期間の認定についても、甲第七号証及び証人松原貞の証言によれば、被告は、川崎炉材について調査の結果、昭和六二年一〇月から昭和六三年二月までの五か月間漏水があったことを確認したため、右期間を同社の変更基準水量の算定期間から除外したことが認められるが、前述の基準水量を設けた趣旨からすれば、漏水が認められる部分を全て変更基準水量の算定期間から除外することはむしろ右趣旨に沿う措置であるということができる。

(3) さらに、原告らは、被告も監査結果が出るまでは最大使用水量を示している月の数値を変更基準水量としていたと主張する。

しかし、原告らが根拠として挙げているアース製薬、タテホ化学の昭和五〇年八月二〇日の基準水量の変更については、証人松原貞は、昭和四九年一〇月から昭和五〇年三月までの使用水量実績と将来の予測を考慮して決定したと証言しており、被告がこの時点で原告らの主張する算定方法によって右変更基準水量を決定したと認めるに足りる証拠は存在しない。

(4) 原告らは、このほか、関西電力、桃井製鋼、塩野義製薬及び家島分水の基準水量が一日最大使用水量で算定されている点も根拠として挙げているが、関西電力については、証人松原貞の証言によれば、関西電力の当該基準水量の決定は新規の給水の場合であって、使用実績がなかったために、その当時給水申込書に記載されていた一日最大使用水量を基に算定したのであるし、桃井製鋼及び塩野義製薬については、甲第三九号証、第四五号証によれば、特定事業者からの減量申請があった場合であり、本件六社のように被告が職権で基準水量を増量変更する場合とは異なる。

また、家島分水についても、そもそも分水は被告の当然の義務ではなく、赤穂市水道事業の設置等に関する条例三条二項但書により公営上必要と認められるときに限り認められるものであるが、被告は家島への分水が公益上必要であると判断した上で、分水契約に基づいて分水しているのであり、右契約における契約水量は特定事業者制度における基準水量とは全く性質が異なるものである。

(5) さらに、原告らは、平成三年六月一九日の民生生活常任委員会における松原部長の発言及び監査結果における監査委員の指摘も根拠として挙げているが、甲第一九号証によれば、松原部長は、確かに右委員会において、当時の使用水量について、「一番使用量の高い月、つまり規則どおりで、一番高い値をとらえてこれを対象に負担金を徴収する」旨発言しているが、この発言のみから、直ちに、被告が原告らと同じ算定基準を採用していたと認定することはできないし、監査委員の指摘についても、甲第一号証によれば、監査委員は、本件監査請求における監査結果の中で「月最大使用水量が基準水量を越えた増量分」について特定事業者開発負担金を賦課徴収すべきであると記載しているが、他方で、「常時使用する最大水量」の定義等が明確でないとも記載しており、やはり、この記載のみから被告が原告らと同じ算定基準を採用していたと認定することはできないといえる。

(6) したがって、原告らの主張はいずれも採用することができない。

三  争点3について

1  以上からすれば、被告は、本件五社について、昭和五〇年八月二〇日付けで変更した基準水量を平成三年九月二日に再び増量変更し、川崎炉材について、昭和五〇年九月ころ決定した基準水量を平成三年九月二日に増量変更したのであり、その増量分の数値は次のとおりとなる。

① アース製薬 五三〇〇立方メートル

② 川崎炉材 八〇〇立方メートル

③ 正同化学 二万二八〇〇立方メートル

④ 太陽鉱工 二一〇〇立方メートル

⑤ タテホ化学 一万〇六〇〇立方メートル

⑥ 住友セメント 一万四六〇〇立方メートル

2  そして、平成三年八月一日以降の算定基礎額が八万九〇〇〇円であることについては当事者間に争いがないから、被告が右基準水量の増量変更に伴って特定事業者開発負担金を賦課徴収する場合の増量分に相当する特定事業者開発負担金の額(ただし、一〇〇〇円未満は切捨て。)は次のとおりとなる。

① アース製薬 一五七二万三〇〇〇円

② 川崎炉材 二三七万三〇〇〇円

③ 正同化学 六七六四万円

④ 太陽鉱工 六二三万円

⑤ タテホ化学 三一四四万六〇〇〇円

⑥ 住友セメント 四三三一万三〇〇〇円

3  したがって、被告は、平成三年九月二日の本件六社の基準水量の増量変更について、次の額の特定事業者開発負担金の賦課徴収を怠っていることとなる。

① アース製薬 二九九万六〇〇〇円

② 川崎炉材 五万九〇〇〇円

③ 正同化学 二〇八二万六〇〇〇円

④ タテホ化学 二九六万六〇〇〇円

⑤ 住友セメント 一七五〇万三〇〇〇円

第四  結論

よって原告らの本件請求は、被告が、アース製薬株式会社に対して行っている水道供給につき、平成三年九月二日にした特定事業者開発負担金の賦課、徴収に際し、二九九万六〇〇〇円の賦課、徴収を怠っている事実、川崎炉材株式会社に対して行っている水道供給につき、平成三年九月二日にした特定事業者開発負担金の賦課、徴収に際し、五万九〇〇〇円の賦課、徴収を怠っている事実、正同化学工業株式会社に対して行っている水道供給につき、平成三年九月二日にした特定事業者開発負担金の賦課、徴収に際し、二〇八二万六〇〇〇円の賦課、徴収を怠っている事実、タテホ化学工業株式会社に対して行っている水道供給につき、平成三年九月二日にした特定事業者開発負担金の賦課、徴収に際し、二九六万六〇〇〇円の賦課、徴収を怠ってる事実、住友セメント株式会社に対して行っている水道供給につき、平成三年九月二日にした特定事業者開発負担金の賦課、徴収に際し、一七五〇万三〇〇〇円の賦課、徴収を怠っている事実がそれぞれ違法であることの確認を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余はいずれも理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法七条、民訴法八九条、九二条本文、九三条一項本文を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官辻忠雄 裁判官渡邉安一 裁判官伊東浩子)

別表1〜10〈省略〉

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